米国阿房列車その1-2

さて、出発である。
寝台車は2両連結してあるが、その全てが個室である。
手荷物をしかるべきところに片付けたところで
ボイがやってきて、室内の説明を始める。
驚いたのは、個室内に便所があることだ。
普段は写真のように収納されている。


上側の棚を引き出せば洗面台になり、下側の蓋を
跳ね上げれば便器である。

大変便利に思えるが、友人、夫婦、恋人、親子等、
余程の臭い仲であっても、相部屋のまま使用するには
耐えないに違いない。
ましてや、腹を下していたりすれば大惨事である。
とはいえ所謂、共同便所とやらは設置されていないので、
臭気等の問題も、個人主義とやらで米国式に解決する
のであろう。


便所以外にも机などが仕込まれておりなかなか楽しい。

机を引張り出してみるとチェス盤に成っていたりする。
成程と感心することしきりである。


さて、車窓である。
紐育から州都のアルバニイまではハドソン川に沿って
ひたすら北上をする。

途中のポキプシイまでは、メトロノウス鉄道という近郊列車の
線路を走るのであるが、特急列車に乗る醍醐味は、何と言っても
その睥睨感にあると言えよう。庶民共が通勤電車に揺られるのを、
また歩廊で電車を待って立ち尽くすのを、特急列車の車内から
悠然と眺める。この優越感こそが醍醐味である。
しかし近郊鉄道とは言えど、どの駅も基本的に無人である。
更に各駅の歩廊に人影も少なく、例の醍醐味も味が薄くなって
しまうのが口惜しい。


車窓に流れる川崎重工現地法人を眺めたりしているうちに

2時間半程で紐育州の州都アルバニイに到着した。
しかし、州都はハドソン川の西岸にあり、駅は東岸にある為、
特に鉄道車庫と駐車場以外は何もない場所である。


ここでは、先着しているボストンからの編成と連結を行う為、
45分程停車する。折角なのでその様子を見ようと歩廊に立ったが
歩廊の遥か先に食み出し停車をしている為、連結の様子はとくと
判らない始末である。


所在無げに煙草を吸う他の乗客と、しばし眺めているうちに
徐に機関車が解放されて行った。

そして特段の合図もなく、前方の留置線に居た列車が後退を始め、
何となく連結を行い、全てが完了した。

列車の連結は、鉄道運行における一つの催しであると思うのだが、
その辺りをソツ無くこなしてしまうの如何な物かと思うが
どうであろう。


ボストンからの5両の列車連結作業を終え、13両となった列車は、
ハドソン川を西に渡り、愈々シカゴに向かって西進を始める。
その手始めに、私は夕食を食堂車で食することにするが、
その様子は次回とする。

続く