米国阿房列車その1-1。

レイクショア号。

唐突だが、シカゴに行こうと思う。
シカゴに差し当たっての用事は無いが、
ともかく行くことにする。


話を脱線する。
世間の人々は世知辛いので、どこそこに行くとか
行ってきたと言うと、何をして来たかとか、
どうであったかをすぐ知りたがる。
しかし、旅というものは本質的には行きたいから
行くのであって、行くことそのものが目的であっても
良いわけである。
行くだけ行って、当地で得るもの無く帰って来たとしても、
此方としては気分良くサッパリしたものであるが、そう説明
しても、世間の人は「はぁ」と、まるで肩透かしを食った
ような対応をするので困ったものである。
 近年、日本では「乗り鉄」なる便利な言葉が生まれて、
上記の件を説明せずとも理解してくれつつある風潮の様だが、
ここ米国ではその気配も無く、いちいち説明する手間が
あるのが業腹である。
まあ、話がそれた。


ともあれ、シカゴには寝台列車で行くことにした。
座席車も連結されているが、某サイコロ番組ではあるまいし、
何も好き好んで19時間の旅路を座席で過ごすこともあるまい。


 本日乗車する列車は、ニューヨークペンシルバニアスティションを
15:45に出発するアムトラックの特急 レイクショア号だ。
寝台車利用者は飛行機で言う所のファアストクラスである為、
アセララウンジという待合室を使うことが出来る。


折角特急列車に乗るのだが、話は順を追って説明するので
各駅停車となる。大変迷惑を掛けるが、ご理解ご協力頂きたい。
また話をそらすと、ペンシルバニアスティションは各地への
長距離特急や、ロングアイランド、ニュウジャァジィへの
近郊列車の発着点である。しかし、各列車が何番線から発車するのかは、
10分前に電光表示盤に表示されるまで判らないのである。
その為、近距離の乗客も、トランクを引き摺った長距離客も、
電光掲示板の前でたむろして、受験の合格発表の様に自分の乗る
列車の番線発表を待ち構えるのである。
ダイヤが乱れているのならば理解できるのだが、平常運転時に
この有様はいったいどういう了見なのか、責任者を呼びつけて
説明を求めたいものである。


そんな訳で、アセララウンジで薄い珈琲を啜っていると、
レイクショア号の発車番線が発表され、ラウンジ内に
乗客は時間なので行くようにとの案内がなされた。
さて、と御輿を上げたところで昼食を食べ忘れていた事を
思い出したので、サンドウィッチを買って来た。
そうこうするうちに、出発の5分前となり慌しく列車に
飛び乗った。
愈々、列車が出発である。


つづく